ペスト

久しぶりに小説を読んだ。ペストだ。

感染症による都市封鎖とその中での人々の葛藤を描いたものだ。

高校生の頃に文学史でこの作品を知ったが、当時は暗いイメージであったので読まなかった。

しかし、30数年が経ち、今のこの状況下で気になって仕方がなかった。

読みたい本があるならば図書館に行きたいところだがそれもできない。

書店に行き文庫本コーナーで探す。

作者別でカミュの棚に行くが見つからない。


いつもだったら通販で買えばよいと思うが、今回はなぜか書店で買いたかった。

店員さんに聞いてみる。

最近とても売れているとのこと。

その店員さんが入荷したばかりで陳列していない在庫を調べてくれたら、ようやく見つかった。

読み始めるとすぐにどきっとする描写があった。

生きるために残された時間を遊びや飲み食いで空費していると書かれているのである。


本当であればこれは平和で幸せなシーンなのかもしれない。

しかし、その後に忍び寄る病気の前では皮肉に見える。

小説は長編であり、特徴的な登場人物による様々な出来事への対峙の仕方や心の変化などが細かく描かれている。


あのペストであることを認めたがらない役人、病気が蔓延していることを忘れようとカフェやシアターに繰り出す市民、感染してしまい苦しむ患者、ペストと戦う医者たち・・・。

今現実に起きていることと重なって見えてしまう。

この小説の舞台は、194×年のアルジェリアの港町オラン。

今は、2020年。


これだけ月日が経っても人間の行動様式や心理状況はあまり変わらないのかも知れない。

しかし、小説では都市封鎖できたが、今は交通網の発達であっという間に世界に蔓延してしまっている。


小説は読み進めれば結末まで至るが、今の現実社会は進行形なのでどうなるか分からない。

不条理と思いながらもこの感染症に抗(あらが)っていくしかない。



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